ずかんカード
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 用語 | 鉄骨工事(てっこつこうじ) |
| 英語 | Structural Steel Work |
| ひとことで | 工場でつくった鉄骨の柱や梁を、現場で組み立てて、建物の骨組みをつくる工事 |
| 関連用語 | 製品検査/アンカーボルト/建方/建入れ直し/高力ボルト/トルシア形 |
| よく聞く度 | ★★★★☆ |
この記事の要点
- 鉄骨工事は、工場での製作・製品検査 → アンカーボルト → 建方 → 建入れ直し → 本締め → 溶接・検査 → デッキの流れで進む
- 建入れ直しでは、トランシットで2方向から柱の垂直を確認する
- 高力ボルトは「一次締め → マーキング → 本締め」。ピンテールの破断とマークのずれを確認する
ルーキー鉄骨の現場って、クレーンで柱を立てるのがかっこいいですよね!



そうだね。
でも、建方の前の準備や、組み立てたあとの確認がとても大事なんだ。
順番に見ていこう。
「鉄骨工事って、どんな流れで進むの?」「高力ボルトは何を確認すればいいの?」と思っていませんか。
この記事では、建築の施工管理10年目の私が、鉄骨工事の流れと、工場での製品検査、建方、建入れ直し、高力ボルトの締め付けで監督が確認していることを、図解でやさしく解説します。
私はこれまでに、鉄骨造2階建ての事務所・商業施設、鉄骨造2階建ての飲食店を担当し、いまは鉄骨造4階建ての工場の現場を担当しています。
この記事でわかること
- 鉄骨工事の流れ
- 工場での製品検査で見ること
- 建方の前と、建方の日に確認すること
- 建入れ直しと、高力ボルトの締め付けの確認
- 鉄骨建方の安全設備
ずかんメモ:この記事の数値は、国土交通省の「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」をもとにしています。実際の現場では、設計図書(特記仕様書など)を優先してください。
鉄骨工事とは?
鉄骨工事とは、工場でつくった鉄骨の柱や梁を、現場で組み立てて、建物の骨組みをつくる工事です。
鉄筋コンクリート造とちがって、柱や梁の多くは鉄骨製作工場(ファブ)でつくられます。現場では、それをクレーンで吊り上げて組み立てていきます。


| 順番 | 工程 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 工場での製作・製品検査 | 工場で柱や梁をつくり、寸法や溶接を検査する |
| 2 | アンカーボルト設置 | 基礎に、柱を固定するボルトを埋め込む |
| 3 | 建方(たてかた) | クレーンで柱や梁を吊り上げ、組み立てる |
| 4 | 建入れ直し | 柱の倒れなどを測って、垂直に直す |
| 5 | 本締め | 高力ボルトを締め付けて、柱と梁をしっかりつなぐ |
| 6 | 現場溶接・検査 | 現場で溶接する部分を溶接し、検査する |
| 7 | デッキプレート | 床のコンクリートを打つための鋼板を敷く |
私は、この流れのすべてに監督として関わっています。
工場での製品検査
鉄骨は工場でつくられるので、現場に運ぶ前に、工場で検査をします。これを製品検査といいます。
私が製品検査に立ち会ったときは、次のことを確認しました。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 検査の概要 | どの部材を、どんな方法で検査するか |
| 工場の自主検査の結果 | 工場が自分たちで行った検査の記録 |
| 検査する部材の図面 | 図面と照らし合わせて確認する |
| 寸法 | 部材の長さや、ボルト穴の位置などが図面どおりか |
| 溶接部 | 溶接がきちんとできているか |
ずかんメモ:工場で直せることは、工場で直しておくのが基本です。現場に運んでからでは、直すのが大変になります。
建方の前に確認すること
建方の前には、柱を受ける部分がきちんとできているかを確認します。


| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| アンカーボルトの働き | 基礎から出ているボルトの長さが足りているか |
| アンカーボルトの芯ずれ | ボルトの位置が、墨(基準の線)からずれていないか |
| ベースモルタルのレベル | 柱を受けるモルタルの高さが、決められた高さになっているか |
アンカーボルトの位置は、基礎の上に出した墨をもとに確認します。墨出しについては、墨出しとは?の記事でくわしく解説しています。
ずかんメモ:公共建築工事標準仕様書では、アンカーボルトは二重ナットと座金を使い、ねじがナットの外に3山以上出るようにすることになっています。
建方の日に確認すること
建方(たてかた)とは、クレーンで鉄骨の柱や梁を吊り上げて、組み立てていく作業です。建方は、専門の鳶(とび)さんが行います。
建方の日に、私が監督として確認していることは次のとおりです。
- クレーンの配置:決めた位置に据えられているか
- 立入禁止の区画:作業する場所に、関係のない人が入らないようになっているか
- 風の強さ:強い風のときは、作業を中止する
- 合図:クレーンの合図をする人と、合図の方法が決まっているか
- 安全設備:建方用の仮設資材(安全設備)が、きちんと用意・使用されているか
ずかんメモ:高さ5m以上の鉄骨の組立てでは、建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者を選ぶこと、立入禁止にすること、強風などの悪天候で危険なときは作業を中止することが、労働安全衛生規則で決められています。



クレーンで鉄骨を吊るから、まわりにも気をつけないといけないんですね!



そうなんだ。
建方の日は、現場全体がいつも以上に緊張する日なんだよ。
建方の安全設備
鉄骨の建方は、高いところで行う、とても危険な作業です。安全設備をしっかり用意して、確認しておくことが大切です。


| 安全設備 | 役割 |
|---|---|
| フルハーネス | 落ちたときに体を支える |
| コラムバンドと親綱 | 両側の柱にコラムバンドを巻き、そのあいだにフックをかけるためのロープ(親綱)を張る |
| スタンション | 梁の上に立てて、親綱を支える支柱 |
| 水平ネット | 梁の下に張って、人や物が落ちたときに受け止める |
| 安全ブロック | 柱を昇り降りするときに、落下を止める |
| 昇降用の梯子 | 柱を安全に昇り降りする |
| 鉄骨階段の手すり | 鉄骨階段からの転落を防ぐ |
| トビック | 梁に掛ける吊り足場。ボルトの本締めなどの作業で使う(製品名) |
フルハーネスについては、フルハーネスとは?の記事でくわしく解説しています。
建入れ直し
建方で組み立てた鉄骨は、そのままだと少し傾いていることがあります。本締めの前に、柱の倒れなどを測って、垂直に直すことを建入れ直し(たていれなおし)といいます。
私の現場では、トランシット(角度を測る測量機)を使って、2方向から柱を見て、垂直になっているかを確認しています。
ずかんメモ:1方向から見ただけでは、もう1方向の傾きがわかりません。だから、直角に交わる2方向から確認します。
高力ボルトの締め付け
柱と梁は、高力ボルト(こうりょくボルト)という、強いボルトでつなぎます。私の現場では、構造の部分にはトルシア形高力ボルトを使っています。
トルシア形高力ボルトは、先にピンテールという部分がついていて、決められた力で締め付けると、ピンテールがちぎれるしくみになっています。


締め付けの流れ
| 順番 | 作業 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 一次締め | 決められた力(トルク)で、ナットを締める |
| 2 | マーキング | ボルト・ナット・座金・鋼板にかけて、1本の線を引く |
| 3 | 本締め | 専用のレンチで、ピンテールがちぎれるまで締める |
ずかんメモ:1つのボルト群は、群の中央から周辺に向かって締めていきます。一次締めのトルクは、M16で100N・m程度、M20・M22で150N・m程度などと決められています。
締め付けたあとの確認
私が確認しているのは、次のことです。
- ピンテールが破断しているか
- マークのずれ:ナットだけが回って、線がずれているか(ボルトや座金がいっしょに回る「共回り」や「軸回り」がないか)
- ナットの回転量がそろっているか
ずかんメモ:公共建築工事標準仕様書では、ナットの回転量は、ボルト群の平均回転角度±30°の範囲、ボルトの余長はねじ1山〜6山の範囲と決められています。一度使った高力ボルトは、再使用しません。



マークの線が、そんなに大事なんですね…。



そうなんだ。
締めたあとは見た目が同じになるから、マークのずれで「正しく締まったか」を判断するんだよ。
新人に伝えたいこと
安全設備は、しっかり用意・確認しておこう
鉄骨の建方は、専門の鳶さんが行います。でも、とても危険な作業です。
監督として、フルハーネス、スタンション、コラムバンド、親綱、水平ネット、安全ブロック、昇降用の梯子、鉄骨階段の手すり、トビックなどの安全設備を、しっかり用意・確認しておきましょう。
混同しやすい用語
| 用語 | 意味 | ちがいのポイント |
|---|---|---|
| 建方 | 鉄骨の柱や梁を、クレーンで吊り上げて組み立てること | 組み立てる作業 |
| 建入れ直し | 柱の倒れなどを測って、垂直に直すこと | 本締めの前に行う |
| 一次締め | 決められたトルクで、ナットを締めること | 本締めの前に行う |
| 本締め | ピンテールがちぎれるまで締めること(トルシア形) | 締め付けの仕上げ |
| 共回り | ナットといっしょに、ボルトや座金が回ってしまうこと | マークのずれで見つける |
| トルシア形高力ボルト | ピンテールがちぎれることで、締め付けを確認できるボルト | JIS形高力ボルトとは締め方がちがう |
まとめ
- 鉄骨工事は、製品検査 → アンカーボルト → 建方 → 建入れ直し → 本締め → 溶接・検査 → デッキの流れ
- 建方の前に、アンカーボルトの働き・芯ずれ、ベースモルタルのレベルを確認する
- 建方の日は、クレーンの配置・立入禁止・風・合図・安全設備を確認する
- 建入れ直しは、トランシットで2方向から柱の垂直を確認する
- 高力ボルトは、一次締め・マーキング・本締めの順。ピンテールの破断とマークのずれを確認する
鉄骨工事は、建物の骨組みが一気に立ち上がる、迫力のある工事です。そのぶん危険も大きいので、準備と確認、そして安全設備を大切にしていきましょう。
理解度チェック
Q1. 建入れ直しで、柱の垂直を確認するときに使う測量機は?
答え:トランシットです(2方向から確認します)。
Q2. 高力ボルトの締め付けの順番は?
答え:一次締め → マーキング → 本締めです。
Q3. トルシア形高力ボルトの本締めで、ちぎれるまで締める部分を何と呼ぶ?
答え:ピンテールです。

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