ずかんカード
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 用語 | 墨出し(すみだし) |
| 英語 | Layout Marking |
| ひとことで | 図面に描かれた位置や高さを、現場の床・壁・柱に線や印で書き写す作業 |
| 関連用語 | 通り芯/逃げ墨/陸墨 |
| よく聞く度 | ★★★★★ |
この記事の要点
- 墨出しは、図面の位置や高さを現場に書き写す、すべての工事のスタート
- 墨には、通り芯・逃げ墨・陸墨など、役割ごとに種類がある
- ミスを防ぐコツは、反対側から測って確認することと、声に出して2人で確認すること
ルーキー墨出しって、墨で線を引くことですか?



そう、図面の線を現場に写す作業だよ。
この線がずれると、その上につくるものが全部ずれちゃうんだ。
「墨出しって何をするの?」「通り芯や逃げ墨って何?」と思っていませんか。
この記事では、建築の施工管理10年目の私が、墨出しの意味・墨の種類・道具・やり方を、図解と現場の体験談をまじえてやさしく解説します。
この記事でわかること
- 墨出しの意味と、だれが墨を出すのか
- 通り芯・逃げ墨・陸墨など、墨の種類
- 墨出しに使う道具と、墨出しの流れ
- 現場でよくあるミスと、その防ぎ方
墨出しとは?
墨出しとは、図面に描かれた柱や壁の位置、高さなどを、現場の床・壁・柱に線や印で書き写す作業です。
職人さんは、この墨(線や印)を目印にして、型枠を立てたり、壁をつくったりします。墨出しは、いわばすべての工事のスタート地点です。墨が1か所ずれると、その上につくるものもずれてしまいます。
なぜ「墨」というの?
昔は、墨つぼという道具で、墨を含ませた糸をピンと張って弾き、線を引いていました。そのなごりで、今でも現場に書く線や印を「墨」、書き写す作業を「墨出し」と呼びます。
墨出しはだれがやる?
私の現場では、墨出し専門の業者さん(墨出し屋さん)が出すのが基本です。日程が合わず業者さんが来られないときは、施工管理である私が自分で出します。
墨の種類
墨には、役割によっていくつかの種類があります。まずは、基準になる3つの墨を覚えましょう。
通り芯(とおりしん)
建物の柱や壁の中心を通る、基準の線です。図面では「X1」「Y1」のように番号がついています。
逃げ墨(にげずみ)・返り墨(かえりずみ)
通り芯の上には柱や壁が建つので、通り芯の墨は、工事が進むと隠れて見えなくなってしまいます。そこで、通り芯から決まった距離だけ離れた位置に出しておく墨が、逃げ墨(返り墨)です。
私の現場では、通り芯から1000mm離して出すことが多く、「メーター返り」と呼んでいます。


陸墨(ろくずみ)
高さの基準になる、水平の墨です。「陸(ろく)」は、建築の言葉で「水平」という意味です。
私の現場では、床の仕上がりの高さ(FL)から1000mm上に出しています(FL+1000)。窓や天井などの高さは、この陸墨から測って決めます。
ずかんメモ:FLは「Floor Level(フロアレベル)」の略で、床の仕上がりの高さのことです。
地墨(じずみ)・立て墨(たてずみ)
床に出す墨を地墨、柱や壁に垂直に出す墨を立て墨といいます。


親墨と子墨
墨には「親子関係」があります。
- 親墨:通り芯や逃げ墨など、すべての基準になる墨
- 子墨:親墨から測って出す、壁・柱・開口などの細かい墨
親墨がずれると、そこから出す子墨もすべてずれてしまいます。親墨は特に慎重に出します。
墨出しの道具
私の現場で使っている道具は、次のとおりです。
| 道具 | 使い道 |
|---|---|
| トータルステーション | 角度と距離を同時に測れる測量機械。通り芯など、基準になる墨を出すときに使う |
| レベル | 気泡を見ながら水平に合わせて使う、高さを測る機械。陸墨を出すときに使う |
| 墨つぼ | 墨を含ませた糸を張って弾き、長い直線を引く道具 |
| 芯ホルダー | 印をつけるための、太い芯の入ったペン |
| 下げ振り | おもりを糸でつるして、垂直を確かめる道具 |
| スケール | 長さを測るメジャー |
| レーザー墨出し器 | レーザーの光で、水平や垂直の線を壁や床に映し出す機械(必要に応じて使用) |
| チョークライン | チョークの粉をつけた糸で、線を引く道具(必要に応じて使用) |
私が自分で持っている墨出し道具
トータルステーションやレベルは、会社や墨出し屋さんの機械を使います。いっぽうで、次の道具は自分用に持っています。
| 道具 | 私が使っているもの | 使ってみて |
|---|---|---|
| スケール | タジマ「セフコンベGロックマグ爪25」5.5m | 安全帯に取り付けられるので、すぐ取り出せて、落とす心配がない |
| 芯ホルダー | 三菱鉛筆「ユニホルダー」(建築用) | 床や壁に、太くはっきりした印をつけられる |
| 下げ振り | タジマ「パーフェクトキャッチG3-300W」(クイックブラ付) | 垂直を確かめるときに使う |
| 墨つぼ | タジマ「パーフェクト墨つぼ EVO-M」 | 長い直線を、自分で引ける |
ずかんメモ:「マグ爪」は、スケールの先端の爪に磁石がついているタイプです。鉄骨やデッキプレートなど、鉄の部分にくっつくので、一人でも測りやすくなります。
スケール:安全帯に取り付けられるタイプが安心
スケールは、一日に何度も使う道具です。私は、安全帯に取り付けられるタイプを使っています。すぐに取り出せて、腰袋に入れておくよりも、高い所で落とす心配がないので安心です。
新人がまず買っておきたいのは「芯ホルダー」と「墨つぼ」
新人のうちに、まず自分用にそろえておきたいのが、芯ホルダーと墨つぼです。
- 芯ホルダー:墨出しのチェックや、ちょっとした印をつける場面は毎日あります。自分の芯ホルダーがあると、すぐに書き込めます
- 墨つぼ:墨出し屋さんがいないときでも、自分で長い直線を引けるようになります
下げ振り
墨出しの流れ
墨出しは、大きな基準から、細かい墨へと進めていきます。私の現場では、次の順番です。


- ①親墨(通り芯・逃げ墨)を出す
- ②子墨(壁・柱など)を出す
- ③開口やスリーブ(配管を通すための穴)の位置を出す
- ④内装の墨出しでは、SD(スチールドア)の開口補強(LGS)の位置、建具の記号、マグサの高さを床に書き込む
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| LGS | 軽量鉄骨でつくる、壁や天井の下地 |
| 建具の記号 | 図面で、どのドアや窓かを表す記号(例:SD1) |
| マグサ | ドアなどの開口部の上に入れる、横向きの補強材 |
LGSの壁や天井の下地については、LGS(軽量鉄骨下地)とは?の記事でくわしく解説しています。
墨出しでよくあるミスと対策
「100切り」を忘れるミス
墨出しでは、スケールの先端ではなく、100mmの目盛りを基準の墨に合わせて測ることがあります。これを「100切り(ひゃくぎり)」といいます。
現場でよくあるのが、この「100mmを切っている」ことを忘れて、ポイントを取ってしまうミスです。
たとえば、壁芯から1820mmの位置にポイントを取りたいとき、次のようになります。
- 正しい:100mmを切っているので、スケールの1920mmの目盛りで印をつける
- まちがい:1820mmの目盛りで印をつけてしまう → 芯々(芯から芯まで)の寸法が1720mmになってしまう


対策①:反対側から測って確認する
片側から寸法を追って墨を出したら、反対側の通り芯や返り墨からも測って、寸法が合っているかを確認します。両側から確かめることで、途中のミスに気づけます。
対策②:声に出して、2人で確認する
墨出しは、声に出しながら2人で確認して進めると、ミスを防げます。



100mmを切っているのを忘れるだけで、100mmもずれちゃうんですね…!



単純なミスほど起きやすいんだ。
だから、反対側からも測って確かめるクセをつけよう。
新人が墨出しを覚えるコツ
いちばんのおすすめは、墨出し屋さんの作業を見て学ぶことです。どこから測り始めて、どの順番で墨を出していくのか、プロの動きはとても参考になります。
墨出しの順番を覚えるだけでも、作業の効率は上がります。業者さんが来られず自分で墨を出すことになったときにも、きっと役に立ちます。



自分で墨出しをするのは、ちょっと不安だなぁ…。



最初はみんなそうだよ。
まずは墨出し屋さんの横で、順番を覚えることから始めよう!
混同しやすい用語
| 用語 | 意味 | ちがいのポイント |
|---|---|---|
| 通り芯 | 柱や壁の中心を通る基準の線 | 工事が進むと隠れて見えなくなる |
| 逃げ墨(返り墨) | 通り芯から決まった距離(例:1000mm)離して出す墨 | 通り芯が隠れても基準として使える |
| 陸墨 | 高さの基準になる水平の墨(例:FL+1000) | 高さの基準 |
| 地墨 | 床に出す墨 | 床に出す |
| 立て墨 | 柱や壁に垂直に出す墨 | 縦向きに出す |
まとめ
- 墨出しは、図面の位置や高さを現場に書き写す、すべての工事のスタート
- 基準になる「通り芯・逃げ墨・陸墨」と、そこから出す細かい墨がある
- 「100切り」のミスに注意。反対側から測る、声に出して2人で確認する
- 新人は、墨出し屋さんの作業を見て、順番を覚えるのが近道
墨が正しく出ていれば、職人さんは安心して作業ができます。施工管理ずかんでは、墨のあとに続く「型枠」「配筋」などの用語も、一つずつ解説していきます。
理解度チェック
Q1. 通り芯から決まった距離だけ離して出す墨を、何と呼ぶでしょう?
答え:逃げ墨(返り墨)です。通り芯が柱や壁で隠れても、基準として使えます。
Q2. 陸墨は、何の基準になる墨ですか?
答え:高さの基準になる、水平の墨です。たとえば、床の仕上がりの高さ(FL)から1000mm上に出します。
Q3. 100切りで、壁芯から1820mmの位置に印をつけるとき、スケールの何mmの目盛りで印をつける?
答え:1920mmです。100mmを切っている分、目盛りは100mm大きくなります。



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